公募増資で株価が2割も大幅下落
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株式投資をやっていると、そのうち出くわすのが「増資」だ。
増資(ぞうし)というのは、簡単に言うと、企業が株式市場から資金を調達するために、新しい株券を発行することだ。
増資があると、株価は1~2割下がる。
というのも企業の資産が変わらないのに、株数が増えると一株当たりの資産が減る。
これを「株の希薄化」なんて呼ぶが、株の希薄化が起こると、それを嫌って株が売られて株価が下がる増資の目的が前向きなモノであっても、すぐに利益が増えるわけではないので、一株当たりの利益が減ってしまい、配当も減りかねないわけだから仕方がない。
一例を挙げると、関東地区を中心に定食屋チェーンを展開する大戸屋(2705)は、2010年・2013年に公募増資を行っている。
2010年、増資が発表されたのは、3月の決算発表の翌日で、前日この銘柄の株価は1,000円前後だった。
しかし増資が発表されるや否や、株価は900円前後になり一割以上も下がった。
さらに数日後、公募価格が798円に決定すると、株価は800円前後まで下がってしまった。
公募株価はその時点の株価より安くしないと、だれも増資に応じないから、安く売り出すわけだ。
そして公募株価が安いと、現物を売って公募に応じると差益が取れるので、株価は公募株価にどんどん近づいていく。
私は株主優待券(食券)狙いで大戸屋の株を買いつけたのだが、2割も下がる株を持つのは初めてだったからビビった。
経営資金に四苦八苦している新興企業なら、増資は好意的に受け取られて、株価が上がると言うこともあるのだが、通常の企業は増資が決まると、株価は2割くらい下がる。
新興企業の場合は、増資で株価が上がることもある
大戸屋は、2013年にも、公募増資を行っている。
2010年の増資の目的は、野菜工場建設のためというもので、6億円ほどの増資だった。
一方、2013年の公募増資は、海外出店拡大のための増資で、こちらは13億円の増資だった。
大戸屋は関東周辺に出店しているが、東南アジアにも積極的に出店し、海外で稼ぐようになってきたため、海外にも野菜工場を建設しだしたのだ。
そのため、発行済み株式数の2割以上にも当たる新規株券を発行して、資金を調達した。
大戸屋の株価は、長期トレンドで見ると、どちらかというと右肩上がりだったのだが、こういう風に定期的に増資を行う企業は、気をつけておく必要がある。
もちろん、増資によって株価が上がる銘柄もある。
新興市場株で、時価総額が低い銘柄は、超低位株だとかボロ株だと言われるが、第三者割当(わりあて)増資を行うことが多い。
第三者割当増資とは、取引先企業や、投資会社や投資ファンド、特定の相手に対して行う増資だ。
公募増資を募っても資金が集まらない中小企業は、こういう形で間接的に資金調達を行う。
この新株を引き受けた先が、投資会社や投資ファンドであれば、彼らはそれを株式市場で売りさばいて資金を回収するので、株価は下がってもおかしくはないのだが、逆に株価が上がることもよくある。
というのも資金繰りに苦しんでいる企業は、いつ株式市場から退場するやも知れず、それで株価が大きく下がっているからだ。
だから投資会社や投資ファンドが第三者割当増資を引き受ける場合、それなりの勝算があると見なされ、それで株価が大きく上がったりする。
投資会社も、潰れる会社の増資なんか引き受けないし。