節税売り 12月後半に株価が下がる理由とは
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節税売りとは、年末になると起こる株価の下落のことだ。
年末、特に12月中盤からクリスマスくらいまでにかけて、株価は大きく下がることが多い。
これには大きく分けて二つの原因がある。
一つは機関投資家の「ポジション調整」で、もう一つは個人投資家の「節税売り(損出し)」だ。
ポジション調整というのは、保有銘柄や建玉などのポジションを篩(ふるい)にかけて、必要最小限のポジション以外を手仕舞うことを言う。
これは年末年始や、ゴールデンウイークなどの大型連休中に、世界情勢が大きく動いて、株価に大きな影響が出たとき、被害を最小限に抑えるための回避策だ。
プロのトレーダーは、確実に利益を積み上げるため、こういう突発的な出来事で利益が吹っ飛ぶことを嫌う。
そのため、いくら見込みのある銘柄やポジションでも、いったん手仕舞いして現金化するわけだ。
そしてポジションを最小限まで減らしたら、あとはしっかり休養を取って新しい相場に挑むわけだね。
この連休前のポジション調整に加えて、年末は「個人投資家の節税売り」で株価は下がりやすい。
というのも個人投資家の収支は、1月から12月までを年度として計算されるからだ。
一般企業の場合は、3月や9月を年度末に設定しているが、個人の場合は12月が年度末になるので、年間損益は12月末の受渡日の大引け時点で決まる。
そして年間トータルで利益が出ておれば、その利益に20%の税金(分離課税)がかかることになる。
そのため利益が出ている場合は、含み損がある銘柄を損切りして、利益を圧縮して節税しようという動きが出る。
これがつまり「節税売り・損出し」ってことだね。
年末は小型株が動きやすい
東証では、1月4日がスタートで大発会(だいはっかい)から売買が開始され、12月30日の大納会(だいのうかい)で売買が締めになる。
大発会では、たいていの場合、株価が上がる事が多いが、これは「ご祝儀相場」と呼ばれる。
一方、大納会目前の12月後半は、年末年始の大型連休前の機関投資家のポジション調整と、個人の節税売り・損出しで、株価が下がりやすい。
ポジション調整や節税売りをしている間は、買いは消極的だから、どうしても売りに押されて株価は下がる。
そして年末は売買高も売買代金も少なくなる。
年末は、東証一部の売買代金も、活況の目安の2兆円を大きく割れて1兆数千億円くらいになることが多い。
その反面、大きく動きやすいのが、新興株や小型株だ。
機関投資家や大口投資家は、時価総額がデカい銘柄を中心に売買しているが、年末はそれが衰え、代わりに時価総額が小さな銘柄に注目が集まるのだ。
なので12月後半に急騰して、株価が2倍以上になる銘柄も多い。
たとえば、4777ガーラは、2014年12月下旬に急騰が始まり、200円前後だった株価が、2015年1月にはなんと3,000円をつけた。
また、3778さくらインターネットも、250円をウロウロしていたが、2015年末にフィンテック銘柄として急騰し、2016年1月には2,000円を越えた。
どちらも材料が急浮上したのではなく、少し前に出ていた材料が、突然大きく取り上げられて急騰が続くというケースで、思惑が思惑を呼び、高値がさらにそれを加速させるという感じで騰がっていった。
年末というのは、他に騰がっている銘柄が少ないため、こういう思惑銘柄に資金が集中するらしいね。