シェールガス革命で原油価格が暴落
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原油価格(WTI)と株価が、強く連動することがある。
原油価格(WTI)というのは、原油先物の取引価格のことで、世界経済の先行指標として、よく使われる。
ただし普段は、たくさんある指標のウチのたった一つの指標に過ぎない。
なので原油価格がボックス圏にいて、一定の値幅で動いているときは、株価とはあまり連動しない。
ところが2014年秋頃から、事態が急変した。
1バレル=90ドル~110ドルの範囲で、ボックス状態になっていた原油価格が、どんどん下がり始めたのだ。
そして2015年初めには、なんと50円台まで落ちた。
高値の110ドルから見ると、半値まで下がってしまったわけだ。
この原因の一つとして挙げられるのが、2013年にアメリカとカナダで起こった「シェールガス革命」だ。
シェールガス(shale gas)というのは、シェール層の頁岩に大量に含まれる天然ガスだ。
シェール層に天然ガスや原油があることは、かなり以前から分かっていた。
しかしそれを上手く取り出す方法がなく、掘り出しても採算に合わなかった。
ところが2000年代前半に、水を使ってシェール岩を割る方法(水圧破砕)が開発され、またシェール層を水平に掘る「水平坑井」の技術が進んだ。
この技術革新によって、非常に安い費用で天然ガスが採掘出来るようになったため、ガス発電のコストが大幅に下がったのだ。
そのため、アメリカでは、原子力発電の採算が合わなくなり、原発の廃炉がどんどん進んだらしい。
原油価格が下がると株価はなぜ下がるのか?
日本経済にとって、原油高はマイナス要因だ。
原油価格が騰がると、メーカーは製造コストが増えるので、利益が減って業績が悪化する。
特に重油を大量に使う漁業では、採算が取れず、まさに死活問題だ。
なので原油高になると、通常は株価が下がることが多い。
ところが2015年初めからは、原油安が株安につながるという、謎の現象が起こり始めた。
というのも原油先物価格(WTI)が、1バレル=100円台から50円台まで、大きく下がったのに連れ安して、石油関連株以外も大きく下がったのだ。
そしてダウ工業株30種平均も、原油価格と似たような動きをするようになった。
原油価格と株価の相関関係のグラフ(2011-2016)
当初、原油安・株安の相関関係は、世界経済の見通しが悪化したせいだと考えられた。
というのも原油価格が、1バレル=100円前後まで騰がったのは、中国やインドなどの新興国の経済が、大発展して原油需要が増えたからだった。
これから原油不足になる、ということで、原油価格が大きく騰がって高止まりしたのだ。
ところが中国の経済発展にブレーキが掛かり、アメリカではシェールガス革命が起こったため、需給バランスが崩れて原油価格が暴落した。
その結果、ロシアや中東などの産油国の、財政が急激に悪化してしまい、歳入不足を補うために、様々な資源や金融資産を売り始めたらしい。
つまり、
↓世界中の株の株価が下がる
株や債券は、すぐに金に換えられる資産なので、手っ取り早く歳入不足を補うために、日本や米国の株を売り払ったらしい。
なるほどね。