円安トリック 円安になると、日本円換算の利益が増える
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円安になるとなぜ株高になるのか。
これは一般的には、円安になると輸出企業の売り上げが伸びるからだと信じられている。
たとえば標準価格240万円の自動車を、日本で作って輸出した場合、為替レートが、1ドル=120円なら、アメリカでは2万ドルの価格になる。
しかし為替レートが、1ドル=100円なら、アメリカでは2万4,000ドルになる。
2万ドルと2万4,000ドルでは、2割も価格差ができてしまい、これでは価格競争力が落ちる。
そのため円安の方が輸出品がよく売れて、日本経済にプラスになるという。
ところが実はこれは今時、あまり説得力が無い説明だ。
というのも1980年代から、日米貿易摩擦問題で、自動車輸出がテーマになって以来、現地生産が主流になっているからだ。
日本の自動車メーカーは、米国やヨーロッパに工場を作り、そこで日本車を作って販売している。
つまりアメリカで販売している車は、米国国内でアメリカ人労働者を雇って生産販売している。
つまりトヨタや日産などのメーカーは、ドルで作ってドルで売っているし、ユーロで作ってユーロで売っているため、為替レートが動いても殆ど関係が無いのだ。
じゃあ、ドル円の為替レートが円高になると、トヨタや日産の利益が数百億円減るというのは、全くのウソかというと、そうでもない。
これは円安トリックのようなモノで、海外で稼いだ利益を日本円に換算すると、利益が増えたことになると言うだけだ。
たとえば海外で100万ドル稼いだとき、1ドル=90円なら9,000万円の利益だが、1ドル=110円なら1億1,000万円になって、利益が、2,000万円増える。
海外での売り上げは全然増えてないのに、日本円に換算すると、利益が増えたことになるわけだね。
円安株高になる本当の原因は、外国人機関投資家
アメリカやヨーロッパで稼いでいるメーカーは、為替レートによって業績が大きく変化する。
これは外国で稼いだ利益を、日本円換算で計算するからだ。
そのため、円安が進むと、売り上げが伸びなくても、業績がよくなり、株価が上がる。
逆に円高が進むと、売り上げが多少伸びていても業績懸念で株が売られる。
これ自体はまあ分かる。
しかしなぜか、円高になると海外ビジネスとは全く無縁の株も売られ、日経平均が大きく下がってくる。
たとえばドル円の為替レートが2円近く動くと、日経平均は400円くらい動いたりするのだ。
イギリスがEU離脱を決めた時など、為替レートは1ドル=106円台から、99円台まで7円も大きく動いたが、内需企業の株まで投げ売られ、日経平均は1,200円を越える暴落になった。
為替敏感株でもないのに、投げ売りされてるわけだから、投資初心者には理解しがたい動きだろう。
しかし実は、円安株高になる本当の原因は、「外国人機関投資家の売買」だ。
外国の投資家が日本株を買う場合には、為替リスクが発生するので、為替損失をヘッジ(防止柵)するために、同時に日本円売りポジションを持つのだ。
たとえば100万円で買った株が120万円になっても、為替レートが1ドル=100円から120円になれば、ドル換算の株価は1万ドル→1万ドルで、全く利益が出ていないことになる。
しかし日本株を100万円買うと同時に、日本円を100万円分カラ売りして、1万ドルのポジションを持っておれば、為替レートが1ドル=100円から120円になっても、カラ売りを決済して利益が取れるのだ。
なので日本株を買う場合は「株買い・円売り」、日本株を売る場合は「株売り・円買い」という風に、海外投資家はセット売買をしてくるわけだ。
つまり、円安・株高になっている時は、売買の中心は海外投資家になっている。
逆に為替レートが変動していないのに、日経平均株価が大きく動く時は、国内の機関投資家が売買の中心だってことだ。