ベンチャーキャピタルに第三者割当増資する場合
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企業が資金調達する場合、株式による調達が最もコストが低い。
というのも株式にしてしまえば、返済する必要がない資金が手に入るから。
しかし新たに株式を発行する増資は、一株当たり利益を下げて、投資利回りを悪くするため、株価を下げる原因になる。
そのため、既存株主に「新株予約権」を与え、新株を安く買える権利を付与する場合もある。
新株は、直近の平均株価より、1割くらい安く買えるように設定するので、簡単に言うと「ナンピン」できる様になるわけだ。
新株予約権をもらったら、その権利を行使して安く株を買うか、あるいは予約権を市場で売って、下落分を埋め合わせることができる。
一方、既存株主による増資が期待出来ない場合は、投資会社などに第三者割当増資を行うこともある。
これは新興市場株や低位株に多いのだが、投資会社やベンチャーキャピタルに、第三者割当増資と新株予約権を与える方式だ。
投資会社やベンチャーキャピタルは、増資を引き受けた上で、さらに新株予約権も買う。
株価が上がったら、予約権を行使して、株を安く手に入れて売れば儲かるという仕組みだ。
ただし「行使価格」は、最低価格(下限)より上でないとならない。
一例を挙げると、直近一ヶ月の平均株価が、300円の銘柄の企業が増資する場合、新株の価格は270円くらいになる。
これをベンチャーキャピタルABCに対して、100万株分を第三者割当増資する。
さらに300万株分の新株予約権が、最低行使価格は270円で、割り当てられたとする。
この場合、まず270円×100万株=2億7,000万円の増資になる。
行使価額修正条項付新株予約権(MSワラント)
ボロ株・超低位株の企業が、10億円くらい資金調達をする場合、第三者割当増資を、投資会社やベンチャーキャピタルに、引き受けてもらう事が多い。
というのも赤字企業が、一般投資家向けに増資募集しても、買い手がつくかどうか分からないし。
そこへ行けば、投資会社やベンチャーキャピタルは、企業の事業計画を精査した上で、数億円くらいの増資を引き受けてくれるので、手っ取り早く増資ができるわけだ。
で、どういう感じに割当増資が行われるかというと、一ヶ月の平均株価が300円であれば、1割引の270円で新株が発行できるので、10億円調達する場合は、およそ400万株くらい発行することになる。
ただし投資会社が引き受けるのは100万株で、残りの300万株は、新株予約権だけを引き受ける。
新株予約権で引き受ける場合は、「行使価格修正条件」がついている場合が多い。
行使価格修正条件とは、簡単に言うと、「前日の終値の1割引で買える権利」だ。
300円の株価が400円に上昇した場合、新株を270円で発行する条件だと、すぐに予約権を権利行使されて売り浴びせられ、株価が一気に下がってしまう。
そういうことが行われると、また売り浴びせが出て株価が一気に押し下げられるのではないかと、投資家用心して株を買わなくなる。
一方、増資企業側も、400円という値段がついた株を、270円で発行するのは、もったいない。
なので予約権を少しずつ権利行使しつつ、企業側も増資額を増やせる様に、行使価格修正条件付の新株予約権を発行するわけだ。
それでも急激に権利行使して、株価の上昇を冷やしてしまうベンチャーキャピタルに対しては、「新株予約権の行使に関する停止指示」が出せるという様な契約もある。
これは、予約権の行使を35日程度、停止出来るという仕組みで、IPOのロックアップ条項みたいなモノだね。