デット・エクイティ・スワップ(DES)
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第三者割当増資による新株予約権があると、株価の上値が抑えられやすい。
たとえば好材料が出て、ストップ高になったと思ったら、突然大量の売りが湧いてきて、ドーンと半分くらい押し下げられたりする。
ストップ高にずっと貼り付いていて、買い注文もたくさんあって、剥がれるわけが無いと思っていたのに、午後2時過ぎくらいから、売り物が急に増え始めて、大量に株が売却される。
次の例は、日本アジア投資(8518)の5分足チャートだが、権利行使でドーンと下がったようだ。
権利行使で株価急落の例(8518日本アジア投資)
日本アジア投資は、ベンチャーキャピタルだが、投資先の企業が好業績であったり、画期的な技術を開発したりすると、株価が急騰することが多い。
そこで株価が急騰し始めると、新株予約権が権利行使され、新株が市場に出て株価の上昇が抑えられる。
因みにこの企業は経営再建中で、8億円ほどの借入金があった。
リストラで拠点を統合したり、従業員を減らしたりして、単年度決算の黒字化を目指していたが、8億円の負債が重荷になっていた。
そこで香港の投資会社が、転換社債と第三者割当増資を引き受けた。
こういうのを「デット・デット・スワップ(DDS)」とか「デット・エクイティ・スワップ(DES)」という。
デット・デット・スワップとは、デット(debt:負債)を別の形の負債にスワップ(交換)するということで、DDSという。
またデット・エクイティ・スワップとは、デット(debt:負債)をエクイティ(Equity:株)にスワップ(交換)する方法で、DESという。
つまり借金を肩代わりした投資会社は、好きなときに借金を株式に替えて、市場で捌ける。
なので株価が急上昇すると、権利行使を行って株券を取得して、株式市場でそれを売りさばいて、債務の回収と利益を得るわけだな。
新株予約権の権利行使で株価上昇ストップ
業績の良くない低位株は、債券(借金)を転換社債の形で持ち、株価が上がれば、権利行使されて、それが市場で売りさばかれてしまう。
だから良い材料で株価が跳ね上がり、ストップ高になったとしても、そこで予約権の権利行使が起こって、大量の売りが出て株価が冷やされる。
新興市場や2部市場の低位株では、こういうことはよく起こっている。
2016年の8518日本アジア投資の例だと、香港の投資会社と資本業務提携を行い、約8億円の負債(借金)を転換社債にして、さらに新株予約権を発行している。
新株予約権の行使価格は修正条項付で、前日終値の90%の価格で、最低行使株価は271円に設定された。
転換社債は、2月下旬に株式転換され、同時に第三者割当増資分の新株予約権の権利行使も行われた。
そのときの日足チャートと、権利行使の様子が次の図だ。
新株予約権の権利行使の例(8518日本アジア投資の例)
「2015年12月新株予約権の大量行使に関するお知らせ」によると、ストップ高になった2016/02/16の翌日から、新株予約権の権利行使が行われている。
新株予約権の行使の様子
行使日 | 新しく発行された株数 | 行使価額(円) | 予約権の残り株数 |
---|---|---|---|
2 月 17 日(水) | 103,400株 | 275.1 | |
2 月 18 日(木) | 40,000株 | 275.1 | |
2 月 19 日(金) | 50,800 株 | 305.1 | |
2 月 22 日(月) | 144,900株 | 276.3 | |
2 月 23 日(火) | 292,600株 | 275.1 | 1,036,000 株 |
好材料で株価が上がるのは、長くても1週間くらいだし、予約権の権利行使で大量の売り物が出てくるって事が知れ渡ったら、こんなもんだね。
もちろん予約権の権利行使が完了すると、投資家心理が良くなって、株価が急騰することもよくある。